🏭 製造業の現場から見た「副業ブーム」

私は61歳、アルミ加工の会社を経営しています。
社員と派遣を合わせて45名ほど。日々、製造現場で汗を流しながら、品質保証や納期対応に追われています。
私自身も副業に関心を持ち、いくつもの案件に手を出しては借金や失敗を繰り返してきた一人です。
だからこそ、副業の世界で“非常識に稼げる”という言葉を聞くと、反射的に構えてしまいます。
そして最近話題の 「鹿山圭介の非常識なeBay輸出セミナー」。
ネットでも広告をよく見かけますが
内容をよく知らずに飛びつくのは危険です。
私は経営者としての“目”で、このビジネスを分析してみました。
🌏 eBay輸出とは?海外需要を狙う日本人プレイヤーの新戦略
まず、eBay輸出の仕組みを簡単に整理します。
eBayとは、アメリカを中心に世界190ヵ国以上で利用される巨大オークションサイト。
個人でも法人でも、日本の商品を海外に販売することができます。
人気カテゴリには、次のようなものがあります。
- 中古カメラ・レンズ・時計などの精密機器
- ゲームソフト・アニメグッズ・フィギュアなどのサブカル系
- 日本刀・着物・陶磁器などの伝統工芸品
- プラモデル・文房具・CD・レトロ玩具などのコレクター品
“日本では当たり前の中古品”が、海外では高値で取引される。
この「価値のズレ」を利益に変えるのが、eBay輸出です。
💡 鹿山圭介セミナーの主張:「非常識に稼げる仕組み」とは?
鹿山圭介氏が提唱しているモデルは
「在庫を持たずに」「自動でリサーチし」「誰でも月収100万円を目指せる」
という、一見夢のような仕組みです。
流れを整理すると、こうなります。
【1】リサーチツールで売れ筋商品を自動抽出
eBay上で「過去30日で売れた商品」をAIツールで一覧化し
どの商品がどの国で、いくらで売れているかを可視化。
その中から利益率の高い商品をピックアップします。
【2】国内サイト(Amazon・ヤフオク・メルカリ)で仕入れ
日本国内のマーケットプレイスで仕入れ可能な商品を探します。
“相場より安く買って、高く売る”というシンプルな構造です。
【3】出品・発送は外注化
eBayに出品する作業や英語対応、発送処理は代行業者に委託。
副業プレイヤーは「仕入れと管理」だけに集中できます。
【4】在庫を持たず、差額を利益に
注文が入ってから商品を仕入れ、代行業者が発送するため、
在庫リスクがないというのが“非常識な”売り文句です。
一見、理想的な構造。
しかし、経営の現場を知る者として私はこう思いました。
「仕組みとしては正しいが、“再現性”が甘い。」
⚙️ 現場感覚で見る「このモデルの本当の難所」
eBay輸出をビジネスとして見ると、確かに理論上は成立します。
ただし、「副業で簡単に稼げる」と考えると落とし穴が多い。
以下、私が経営者目線で気づいた“3つのリスク”を挙げます。
🔧 ① 在庫を持たない=納期トラブルが増える
製造業でも同じですが、「在庫ゼロ=リスクゼロ」ではありません。
eBayは海外のお客様が相手。
在庫切れ、仕入れ元の遅延、価格変動で納期に間に合わないことも多々あります。
そのたびに返金や評価低下の対応が発生します。
つまり、リスクが“目に見えにくい形”で潜んでいるのです。
🌐 ② 外注依存の仕組みはコントロール不能
外注化は効率的ですが、品質管理を他人に委ねる危険があります。
製造業でいえば、“検査を外部任せにして出荷ミスが増える”ようなもの。
顧客クレームが発生したとき、結局は出品者が責任を取るしかありません。
この点を「完全自動化」と誇張しているセミナーは要注意です。
💰 ③ 利益構造が“薄利多売”
一見「1件で数千円の利益」と聞くと簡単そうに思えますが
実際の1商品あたりの利益は500〜1,000円程度。
しかも、為替変動や送料高騰、関税で利益が消えることもある。
要するに、“稼ぐというより積み上げる作業”なのです。
私のような経営者なら、こうした薄利多売ビジネスを「体力勝負」と呼びます。
💬 セミナーの裏側にある「収益モデル」を読む

リサーチを続けて感じたのは
このセミナーの本当の“収益源”は受講料そのものだということです。
無料ウェビナーで興味を持たせ
「本講座」「コンサル」「ツール使用権」へと誘導するパターン。
受講料は20万円〜50万円。
中には「質問しても返信がない」「サポートが薄い」という口コミも見られました。
もちろん、鹿山氏本人が詐欺をしているとは限りません。
ただ、ビジネスとして「受講料モデル」に偏っている構造は否めません。
つまり、eBay輸出で儲けるより
“eBay輸出を教える”ことで儲ける人たちが上位にいる構造です。
📊 経営者の分析:eBay輸出は“仕組み産業”の一種
この構造を俯瞰すると
eBay輸出ビジネスは、情報・物流・外注が三位一体で動く
「小規模輸出サプライチェーン」です。
要するに――
- 情報をリサーチする人
- 仕入れる人
- 発送を請け負う人
- 教材を売る人
これらの役割プレイヤーが全員で利益をシェアする構造。
どこかの製造ラインと同じで
「どの工程を自分が担うか」によって稼げる額も安定性も変わります。
私から見れば、このモデルは“参入者の位置取りゲーム”なのです。
つまり、末端で商品を回すだけの人は、薄利多売で終わります。
仕組みの上流(ツール開発・講座販売・代行業)に立つ人こそが本当の勝者です。
🧩 私の結論:詐欺ではない。だが“職人向きの副業”だ
結論を言います。
鹿山圭介の「非常識なeBay輸出セミナー」は詐欺ではありません。
ただし、“副業初心者が安易に手を出すべき領域ではない”
というのが私の正直な見解です。
なぜなら、仕組み自体は理にかなっているものの
実行には「管理」「計算」「分析」そして「粘り」が求められる。
私がやってきた製造業と同じで
コツコツ改善し続ける人間しか残らない世界です。
🧠 私が副業で重視している3つの原則
1️⃣ リスクを理解できないものは始めない
2️⃣ 継続できるペースを最初に決める
3️⃣ 主業を支える形で収益を設計する
eBay輸出は、決して悪いビジネスではありません。
しかし「副業としての相性」で言えば
機械加工のような“緻密さと継続性”が要求される仕事です。
それを理解せずに「非常識に稼げる」と思って飛びつくのは、火傷のもとです。
🌅 “常識を積み上げた人間”が、非常識な結果を出す

長年、現場で機械を動かし、人を育て、数々の失敗をしてきた私が言えること。
「非常識な成功」を支えているのは、
実は“常識的な努力と仕組み化”の積み重ねだ。
副業でも会社経営でも、やることは同じ。
リスクを読み、地道に積み上げ、改善を繰り返す。
その先にしか、安定した収益は存在しません。